O'Reilly OSCON第1日目

オレゴン州ポートランド — 月曜日、8年目のO’Reillyオープンソースコンベンション(OSCON)がオレゴンコンベンションセンターで開会した。OSCONの第1日目と第2日目は、各種オープンソースプロジェクトの担当者が各自半日の配分時間でツールの利用方法についてチュートリアルプレゼンテーションを行う。OSCONには複数のトラックがあり、Webアプリケーション、データベース、Perl、JavaScript、AJAX、Ruby、Linux、プログラミング、ビジネスのトラックに分かれている。

1日目はかなり低調だった。多くの出席者は火曜日か水曜日に来るらしく、展示フロアも水曜日開場とあって、会場は空いていた。

Django

わたしはまず、Jacob Kaplan-Moss氏の”Django:記者の期限とWeb開発”というプレゼンテーションに出席した。同氏はDjangoの開発リードの一人だ。DjangoはWebサイトを迅速に開発するためのPython Webフレームワークで、Lawrence.comLJWorld.comで使われている。

Kaplan-Moss氏によると、DjangoのおかげでLJWorld.comのスタッフは「昼食時に思いついたアイデアを帰宅前に実装」できるという。同氏は次のようなシナリオを紹介した。午前中に、開発者がある記者から水質汚染度に関する記事について相談を受ける。読者が郵便番号を使って汚染状況を検索できるようにしたいという。期限は翌日。Kaplan-Moss氏はDjangoを使えばこれも可能だと話した。

このセッションに出席したのは25~30人ほど。Kaplan-Moss氏はDjangoの機能とDjangoでアプリケーションを作成する場合のヒントを説明した。午前8:30から正午までのこのセッションでは、Djangoのデザインの背景理論、Djangoプロジェクトのセットアップ方法、テンプレートの役割、Djangoのページ上の情報に関する全般的な解説、その他の説明が行われた。

Kaplan-Moss氏は、Djangoで書かれたJellyrollという名前の作りかけのプロジェクトを使ってDjangoのデモも披露した。このプロジェクトでは、複数の”Web 2.0″アプリケーションの履歴を検索して一ヵ所に表示できるようにする。ユーザはGoogle検索履歴、del.icio.usブックマークなどを、各サイトに別々に行かなくても1つのアプリケーション内でこれらを一度に表示できる。

Kaplan-Moss氏は、DjangoはWeb開発に便利なだけではなく、今回のプレゼンテーション用スライドもDjangoで作成したものであり、LJWorld.comのスタッフもDjangoサイトの内容を印刷用にQuarkXPressに変換していると話した。また、PediaPressでは、Djangoを使ってWikipediaの記事をオンデマンドで出版用に生成しているという。

出席者のほとんどがPythonもDjangoもよく知らないようだったが、Djangoの機能に関心を示していた。わたしが特に興味深いと思ったのは、コードでデータベースを定義し、Djangoでデータベースを自動作成し、そのデータベースにデータの種類を適用する機能だ。たとえば、DjangoのURL用データベースタイプには無効なURLは格納できない。

現在のDjangoの安定版リリースでは、Django 1.0リリースまでAPIの安定性は保証されないとしている。だが、Kaplan-Moss氏は、Djangoチームは今週中にもOSCONで0.95をリリースする予定で、その段階でAPIはほぼ安定すると話した。

ランチ休憩中に、OSCampルームに行ってみた。わたしの理解では、OSCampはあらかじめ議題を決めずに、カンファレンス出席者たちが集まって関心のある話題を語り合う場所ということになっている。わたしが最初に入っていったときはOSCampルームには少ししか人がおらず、たいして何も話し合われていなかった。

だが、日程を終えた後は盛り上がっていた。20人ほどが小さいグループに分かれ、活発な議論が行われていた。なかなか興味深い試みで、カンファレンス終了までにどうなるか楽しみだ。

Asterisk

休憩時にその辺を見てまわって昼食をとった後、Asteriskのチュートリアルセッションに出席することにした。Brian Capouch氏によるこの”Asterisk徹底解説”には60人ほどが出席していた。普通ならプレゼンテーションの最中に誰かの携帯電話が鳴ったりしたら迷惑なものだが、Capouch氏のAsteriskセットアップを動作させるデモでは、出席者の携帯電話が何回か鳴らされた。

Asteriskのプレゼンテーションでは、まず「音声要素」および音声の物理的側面が説明され、次に従来の電話サービスのしくみ、アナログ回線伝送用とデジタル回線伝送用の音声サンプリングの複雑さが説明された。

Capouch氏の説明は広範囲に及び、その多くがAsterisk管理者志望者にとっては歴史的、学術的な関心に限定される内容だった。興味深い内容ではあるが、冒頭の電話技術の歴史解説は省略して、Asterisk管理作業の話題にいきなり入った方が時間をもっと有効に使えたように思う。Capouch氏がAsteriskそのものの説明に入ったのは、セッション休憩まであと半分くらいになってからだった。

休憩の後、Capouch氏はまず、Asteriskのコンフィグレーション、コンフィグレーションファイルの構成、Asteriskコンフィグレーションの階層構造について概要を説明した。次に通話フロー、Asteriskの拡張機能とモジュール、Asteriskに関するその他の技術的な話題が解説された。

その後で、各種シナリオ別のAsteriskの動作が紹介された。出席者には事前にAsterisk CLIの出力とAsterisk管理インタフェースに関する2つの資料が配られた。Capouch氏は簡単なAsteriskセットアップを使ってデモを行い、資料内の該当箇所を示した。

このデモはAsteriskの動作を知る上で興味深く、Asteriskで電話をかけるときの背後のしくみがどれくらい複雑かよくわかった。O’Reillyのスケジュールにあった説明を見て、Asteriskシステムの実際のセットアップ方法がもっと詳しく説明されることを期待していたのだが、いずれにしても有意義なプレゼンテーションだった。

とりあえず、OSCONは緩やかながらも好スタートを切ったようだ。パーティや時間外BOFセッションについては後日報告する。火曜日の昼間はO’Reillyレーダー幹部説明会があり、夜はオープンソースアワードとLarry Wall氏の今年のState of the Onionが予定されている。

NewsForge.com 原文