ライブCD「Elive」のEは今やエレガントのE

EliveEnlightenmentウィンドウマネージャを採用したDebianベースのライブCD Linuxディストリビューションだ。Eliveはデスクトップアプリケーションを豊富に取り揃えた見た目の美しい環境を提供するということと、古いハードウェアでも効率良く動くということを目標としている。Eliveの開発はまだ完了したわけではないが、しかし1年以上前のバージョン0.3のリリース以来Eliveは大きく進歩している。Eliveはディストリビューションというものが肥大化することなくいかに美しいものになれるのかということを教えてくれる作品だ。

今回私はEliveの最新のテストリリース(Elive 0.6.1)を使うことにした。最初に試してみたときには、残念なことにロード中の画面でハングしてしまった。そこでコンソールで確認してみると、NTFSパーティションがうまくマウントできていないということが分かった。なお出力されていたエラーメッセージをそのまま書くと「Windows broking Elive with his NTFS.」となっていた。Eliveが途中で止まらないようにNTFSパーティションを無視して先に進むという内容のメッセージも表示されるのだが、(複数のデスクトップマシンで試してもみたが)それでもやはりブートすることができなかった。最終的にはBIOSでSATAコントローラをオフにしてEliveを起動させることにした。

Eliveではブート時にキーマップを選択できるようになっていた。しかし私が使っているDvorakマップは含まれていなかったのでQWERTYを使わざるを得なかった。テーマとしてはデフォルトのEliveテーマとNightテーマのどちらかを選べるようになっていたが、私はデフォルトのEliveテーマの方で始めることにした。その結果、私は落ち着いた感じの明るい青色の美しいデスクトップにログインすることになった。

私はまず最初にFirefoxを立ち上げてみた。しかし「”page could not be displayed”(ページを表示できません)」というエラーが出た。そこで調べてみると、ネットワークカードの検出は正しく行なわれていたがeth0インターフェースがオンになっていなかったことが分かった。そこでeth0を手動でオンにしてデフォルトゲートウェイを指定するとインターネット関連は正しく動くようになった。

その後アプリケーションメニュー経由でいろいろと見始めたのだが、(ライブCDという事情で、ディスク容量が大幅に制限されているのにも関わらず)用意されているプログラムの幅広さに私は驚かされてしまった。例を挙げると、動画・音楽プレイヤー(デフォルトではMplayerとXMMS)、ビデオエディタ(KinoとCinelerra)、サウンドエディタ(ReZound、ZynAddSubFx、Hydrogen)、オフィスプログラム(Abiword、Xpdf、Gnumeric)、2D/3Dグラフィックエディタ(GIMPとBlender)等々があった。しかし最初に映画の予告編を再生しようとしてみたときには、私のハードウェア構成ではうまく再生できなかった。そして正しく動かすためにはMPlayerのビデオ出力の設定を変更する必要があった。一方、音楽については最初からまったく問題なく動いた。

オーディオ関連のメニューを見回していると、「Elive Essence」という名前のショートカットを見つけた。そこで試しに実行してみるとXMMSが環境音楽のストリーミング再生を始めた。私は今回Eliveを試していたほとんどの時間その音楽を流していたが、広告が流れたのは1時間ほど再生した後の1回だけだった。それ以外の時は落ち着いた感じでまったく邪魔にならなかった。私は仕事の邪魔にならないような音楽をいつも非常に時間をかけて探しているので、これは私にとっては嬉しいおまけだった。Eliveにはまたstreamtunerプログラムも入っていた。streamtunerを使うと、様々な提供元からの幅広いストリーミング音楽から楽曲を選ぶことができる。(BIOSでSATAコントローラをオフにしたので)ハードディスクを使うことができない状態だったので、これはありがたかった。しかし残念ながら中には再生するためにRealPlayerが必要となるものがあり、予想通りなのではあるが、RealPlayerはライセンス上の問題のためにEliveには含まれていなかった。

Elive programs
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またアプリケーションメニューにはEliveに含まれている機能のデモがいくつか入っていた。デモの一つでは、MPlayerのウィンドウ5つ(大きなメインウィンドウ1つと、その回りに小さめのウィンドウ4つ)が開かれ、IBM社によるLinuxの広告が流れるというものがあった。また別のデモでは、EliveのコピーをロードしたQEMUのインスタンスをオープンするというものもあった。これは実行速度がかなり遅かったものの、ライブCDから起動したエミュレータによって同じライブCDのコピーが動いているというのにはちょっと感動した。また(BIOSでSATAコントローラをオフにしたので)ハードディスクは使うことのできない状態だったのだが、(以前Tao Linux用に作ったスクリプトを使って)フラッシュメモリに自分の設定を保存することができた。

EliveにはCD/DVD作成用のBraseroやGnomeBakerといったプログラムなど私が今までに使ったことのないプログラムもいくつか含まれていた。BraseroはGNOMEで使うことを前提にデザインされているのだが、エレガントなEnlightenment環境にもマッチしていた。またEliveには共有フォルダを閲覧するためのLinNeighborhoodも入っていたが、私のネットワークでは動かなかった。

しかし私がかつて使ったことのなかったプログラムの中でも最も注目すべきだったのは何といってもElive Panelだ。Elive Panelはかっこ良い見掛けのインタラクティブなコントロールパネルで、Eliveで調整可能な設定の多くはElive Panelを通して調整することができる。ただ見掛けは非常に良いが、すべてのアイコンの意味を理解するのは難しかった。アイコンにはテキストのラベルが付いておらず、何をするものなのかを知るためにはアイコンの上にマウスをかざすことでパネルの下の方にスクロールされてくる説明を読んでいくしか方法がなかった。そのためすべてのオプションが何をするものなのかを知るために一つ一つ確かめていくのはかなりの時間がかかった。

Eliveをしばらく使用した後、私は自分がウィンドウを閉じようとしたときにウィンドウが閉じられずに最大化してしまうことが何度かあったことに気付いた。最初はそれについて特に何も思わなかったのだが、何度か同じことが起こったのでちょっとテストしてみた。その結果どうやらウィンドウを最大化するためのボタンの機能に対応する場所がボタンを表わす画像の範囲を越えていて、ウィンドウを閉じるためのボタンの方向へ数ピクセルはみ出しているようだった。このことと、マウスを画面の右端へ持っていくとEnlightenment内の仮想デスクトップが切り替わるという事情とがあいまって、最初の頃私はプログラムを閉じるのに苦労した。とは言え一度慣れてしまえば後は何も思わなくなった。

私はEliveのNightテーマも何度か試しに使ってみた。私はNightテーマの見掛け自体は気に入っているのだが、たいていのプログラムは暗い背景でも見やすいようにはデザインされていない。特に背景が白であるウェブページを閲覧すると、コントラストが不快だった。またメニューやコントロールの多くがNightテーマでは読みにくかった。確かにEliveチームは様々な場所でテーマがマッチするように工夫を凝らしていたようだったが、私には問題が多いように思えたのでデフォルトの見掛けの方を使い続けることにした。

私はEliveの今回のリリースでいくつかの問題点を見つけたが、しかしこのリリースはあくまでも開発リリースであるため、それは当然のことだ。なおEliveを動かすことができず助けが必要となった場合には、活発なフォーラムやコミュニティwikiで手助けを求めたりアイデアを提案したりすることができる。Eliveの開発者たちは新機能を作ったりすべての見掛けが良い感じになるように非常に努力しているようだ。

ディストリビューションの中には使ってみようと思わせる魅力に欠けるものも存在する。しかしEliveの場合は幅広く取り揃えられたプログラムや美しいインターフェース、そしてハードウェアに対する要求の低さなどの点において並外れたライブCDとして他のライブCDとは一線を画している。現在の開発リリースを試すとおそらく確実にいくつかの問題点にぶつかることとは思われるが、しかしEliveのエレガントさと機能の豊富さという点でがっかりさせられることはないだろう。

Preston St. Pierreはブリティッシュコロンビア(カナダ)のフレイザー・ヴァレー大でコンピュータ情報システムを学ぶ学生。

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