Linuxレビュー:DSL 4.0: ほんの少しの改良

 Damn Small Linuxは、元々は2002年にJohn Andrewsisが50MBのシステムにどれだけアプリケーションを載せられるか確かめるために開発した極小のLinuxディストリビューションである。それ以来、このプロジェクトは成長し、何百ものパッケージやアプリケーションと取り組む多数の貢献者たちが参加するまでになっている。先月リリースされたDSL 4.0では多くのアップデートと変更が行われたが、最新機能のサポートがまだまだ不十分なため、旧型のハードウェア向けの専用ディストリビューションの域を脱し切れていない。

 Damn Small Linuxにはディストリビューションを実行するための選択肢が驚くほど多くある。ライブCDとしてそのままブートする方法と、USBメモリからのブート、そして無論ハードディスクでのブートもできる。インストールは従来の方法のほか、Windows OS上で立ち上げることもできる。ハードウェア的には16MBのメモリを搭載した486DXといった、ひどく古いCPUでも動く。ハードディスクにインストールした場合は、フルサイズのDebianシステムにアップグレードすることも可能である。

 このディストリビューションはデスクトップとして必要なものを一通り備えている。デフォルトのウィンドウ環境はFluxboxである。アプリケーションやシステム構成ツールを軽快に選択できるメニューが売りだ。インストーラとしては、ハードディスクインストーラとUSBフラッシュメモリインストーラのほかにFrugalインストーラが用意されている。これはDSL ISOファイルをハードディスクからブートするためのブートローダーエントリを付け加えたものに過ぎない。

ハードウェアの互換性

 私の主要なテストベッドであるHewlett-Packard Pavilion dv6105でDSL 4.0を立ち上げてみた。ブートオプションは"sata"。これで手持ちのハードディスクは使えた。デスクトップの表示は解像度1024×768で申し分ない。タッチパッドと後付けのUSBマウスは問題なく使えたが、ネットワーク接続は有線も無線も結局動かなかった。有線チップの方はリバースエンジニアリング版のForcedethモジュールが必要で、これは2.6.xのカーネルにしか含まれていない。DSLのカーネルはLinux-2.4.31だ。また、無線チップの方はNdiswrapper経由でWindowsのドライバを使う必要があるが、DSLに含まれているバージョンはこれに対応していない。

 Damn Small Linuxが極々ローエンドのマシンで動くと知って、物置の置くから昔使っていたDellのXPiCDラップトップを引っ張り出してきた。166MHzのPentiumプロセッサに80MBのメモリを搭載した代物だ。DSLは、旧型の機器向けにISOと同じカレントディレクトリで使用できるブートディスケットをいまもなおサポートしている数少ないディストリビューションである。ブート時、ラップトップのPCMCIA無線LANカードはHermesモジュールとOrinocoモジュールのおかげで有効となったが、ルータに自動的に接続することはできなかった。Wi-Fi Protected Accessを構成する必要があるのにWPAをセットアップする機会を逸していたからである。

 DSLは左記の旧型ラップトップに搭載されたNeomagicグラフィックチップをもうサポートしていないので致し方ないが、フレームバッファチートコードによるブートや、"xsetup"でフレームバッファを選択する方法を試してみたがだめだった。何度やっても"Can't locate module fb0"というエラーが返され、コマンドプロンプトから上へ行けない。

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Damn Small Linux 4.0

 最後にGigabyteのGA-M51GM-S2G Micro-ATXマザーボードを搭載した新型のデスクトップマシンを試してみた。オンボードのイーサネットチップがやはりForcedethを使うため、ネットワーク接続は動かないと踏んでいたので、Linksysの旧型のNC100イーサネットアダプタ(Tulipイーサネットドライバを使用するタイプのアダプタ)を取り付けたところ、ブート時にネットワーク接続が正常に確立された。

 21インチのCRTモニタとオンボードのNvidia GeForce 6100グラフィックチップを使用し、ブート時にブートオプション"xsetup"を指定してXの構成を開始したところ、解像度は1600×1200まで選択でき、マウスバスとキーボードも構成することができた。残念ながら、サウンドチップ(snd_hda_intelモジュールを使用)やEpson R220プリンタなど、このマシンのその他のハードウェアはサポートされていなかった。

 Damn Small Linuxには簡易ながら実用的なハードディスクインストーラが付属する。いくつかの簡単な質問によってパーティション、ファイルシステム、そしてブートローダの構成を訊いてくるが、パッケージやその他の設定を選択するオプションはない。初回のブートの際にユーザはrootのパスワードを設定できる。インストールは約10分かかり、ライブCD環境にてカスタマイズされたデフォルトの"dsl"ユーザ設定が保持される。

システムとソフトウェア

 Damn Small Linuxのデフォルトのデスクトップ環境はFluxboxだが、Joe's Window Managerも同梱されている。メインのファイルマネージャはDFMで、デスクトップに/homeやその他のディレクトリのアイコンを表示し、さらに(ディレクトリ内のリンクを通じて)アプリケーションのアイコンも表示できる。ちょっと見にはやぼったいが、ウィンドウマネージャに求められる多くの機能(壁紙やデスクトップ、DFMフォントを設定したり、ウィンドウとアイコンの背景色の設定したりすること)をサポートしている。DFMの右クリックメニューから他のパーティションやリムーバブルメディアもマウントすることができた。

 Damn Small Linuxには多くのシステムツールや構成をセットアップするプログラムが付属する。その多くは簡単なグラフィックユーティリティとして提供されるが、端末エミュレータで実行されるbashスクリプトもある。いずれもシステムをセットアップするユーザを支援するためのツールだ。一般のオペレーティングシステムで設定できるようなことには何でも対応している。たとえば、画面の解像度、プリンタの構成、各種のインターネット接続オプション、日付と時刻、システム統計、ソフトウェアリポジトリ、バックアップ機能、サーバーイネブラー、cronジョブ、等々を設定できる。

 すぐ使える小さなアプリケーションも、数はそれほど多くはないが用意されている。xzgv、xpaint、xzoomはグラフィックメニューを構成するプログラムだ。Officeメニューの下にはTed Word Processor、Siag Spreadsheet、PDF Viewer、MS Word Viewer、カレンダー、電卓、SQLite、PIMツール、Net dictionaryがあり、Soundメニューの下にXMMS、Dmix、gPhoneがある。また、ネットワーク関係のアプリケーションとしてFirefox 1.0.6、Dillo、Netrik、Sylpheed、SMBclient、VNCviewer、AxY FTP、Microcom、Telnet。ツール類としてEmelfm、MyDSL CD Remaster、CDバーナー、dfmext GUIなどがある。そのほか、ゲームもいくつか同梱されている。

 DSLのソフトウェアインストーラであるMyDSLエクステンションを見ると、そのほかにも多数のアプリケーションがインストールの対象として掲載されている。アプリケーションのカテゴリとして、Multimedia、Net、Games、さらにThemesといったものまである。何百ものアプリケーションを利用できるが、OpenOffice.org 1.1.4、GIMP 1.2、GCC 1.95など、バージョンがかなり古いものが目立つ。現在のカーネルに関してプロプライエタリなグラフィックドライバがまだアップデートされていないことも気になった。

 規模の大きなアプリケーションは、Universal Compressed ISO形式で提供される。これはファイルシステムとしてマウント可能なISO 9660イメージで、それによりメモリ消費を抑えることができる。具体的にはFirefox 1.5と2.0、OpenOffice.org 2.0、NVU、Blenderなどがこの形式で提供される。

 何と、DebianのAdvanced Packaging Tool(APT)も同梱されている。メニューを見ると、Enable Aptへのリンクがある。これでターミナルウィンドウを開き、ローカルのAPTリポジトリデータベースを更新するわけだ。その後、apt-getを用いてDamn Small Linux OSをフルサイズの最新Debianにまでアップグレードすることができる。

 この小さなシステムにここまで機能が詰め込まれているのは驚くべきことである。アプリケーションは何でも揃っているし、システムツール類はサポート対象のハードウェアで問題なく動く。動作は非常にきびきびしており、しかも安定している。ビジュアル的に特に売りとなるものはないが、昔ながらの生産性重視の雰囲気を漂わせている。

 少しでもサポートをという向きには、Frequently Asked Questionsとユーザフォーラムが役に立つだろう。

結論

 この極小パッケージに、ここまで詰め込むとは大したものである。しかし、ハードウェアが陳腐化して新しいハードウェアが登場するとともにDamn Small Linuxは時代遅れとなりつつある。DellのXPiCDで経験したように、著しく古いハードウェアから主要部品のサポートは止まり、その一方で新しいハードウェアのサポートが始まらないと、現在リリースされているDamn Small Linuxを使える人が減り、開発者がハードウェアサポートの範囲を広げ、アプリケーションを最新の状態に保つ努力をしない限り、状況は今後いっそう悪化するだろう。

 私はいまもなおDamn Small Linuxを気に入っているが、不満なのはハードウェアをアップグレードせざるを得ないために活用の場がどんどん狭まっていることだ。今回のリリースでは、あるシステムがアップデートされたほか、アプリケーションの変更と若干の体裁の修正が行われた。だからサポート対象のハードウェアを所有する人や昔ながらのやり方を意固地に押し通す人は不満に思わなくても、より新しいカーネルにしか対応していないハードウェアを所有する人々は、やはり不満を感ずることになるだろう。

Linux.com 原文