行き届いてはいるが影の部分も併せ持つDarkstar Linux

  Darkstar Linux は今年に入って最初にリリースされた定番ディストリビューションの1つだ。Slackwareをベースにしてルーマニアで開発されたこのディストリビューションは今回、DVDイメージで提供されている。デスクトップ向けディストリビューションとして2004年に初めてリリースされたときのことを思えば、多くの面で改善が施され、非常に安定した動作とアプリケーションの幅広さを誇っている。ただ、そこに影を落としているのがハードウェアサポートの弱さだ。

 リリース告知によると、Darkstar 2008.1は新規Linuxユーザ向けのデスクトップ・ディストリビューションとしてデザインされたという。2004年にCD2枚組で初リリースされたものに比べ、今回のリリースには大きな躍進が見られる。ALICE(Advanced Linux Installation and Configuration Environment)と呼ばれる独自のグラフィカル設定ツール群など、収録アプリケーションの数も大幅に増えている。

darkstar1_thumb.png
ALICE

 ALICEには、インストール用ディスクの作成、Xサーバの設定、ハードディスクへの本来のインストールといった各種の環境構築をDarkstarで行うための7つのコンポーネントが含まれている。インストールは、ライブDVDからディストリビューションを起動してライブ環境から行うことも可能だが、直接インストーラを立ち上げることもできる。

 DVDとして提供されてはいるが、Darkstar 2008.1に収録されているデスクトップ環境はKDEと軽量なXfceのみであり、GNOMEは含まれていない。しかし、それ以外はどのカテゴリにも十分な選択肢が用意されている。たとえば、2種類のオフィススイート(OpenOffice.orgとKOffice)、同じく2種類の著名なメディアプレーヤー(xineとMPlayer、それぞれのフロントエンドであるgxineとKMPlayer)、またWebブラウザと電子メールクライアントについてもFirefoxとThunderbird以外にインターネットスイートのMozilla Seamonkeyが存在する。また、レーシングシミュレータやFPSなど数多くの3Dゲーム、教育用ゲーム、幼児向けゲームもある。もちろん、すべてのKDEアプリケーションのほか、インスタントメッセージングやtorrentのクライアント、CDバーナ、画像エディタのような一般的なアプリケーションも含まれている。

darkstar2_thumb.png
Darkstarのデスクトップ

 Darkstar Linuxは、私が試してきたライブDVD環境のなかでは最も安定している。2.0GHzのデュアルコアCPU(Core 2 Duo E4400)と1GBのRAMを搭載したデスクトップマシンで何時間も動かしたが、一度も不具合が起こらなかった。まだ保存していないドキュメントや多数のターミナルエミュレータ、いくつかのゲームを数時間ほどバックグラウンドで実行させておき、OpenOffice.org、GIMP、Firefox、KOffice、TORCSなど比較的重いアプリケーションを立て続けに起動することで“負荷テスト”を行ったのだが、どのアプリケーションもクラッシュしなかった。また、外付けのドライブをマウントし、このデスクトップマシンとの間で10GBほどのISOイメージのやりとりを行ってもライブDVDの動作に問題は生じなかった。

 ハードウェアの面については、解像度1280×1024の17インチディスプレイは正しく認識され、無線LANカードによるDHCP経由の接続も問題なく行えた。ところが、別のデュアルコアマシン(1.8GHzのCore 2 Duo E6300)ではDVDドライブ自体が認識されず、Darkstarをブートすることさえできなかった。こうした問題は、古いカーネルでIntel製マザーボードDG965RYのIDEコントローラがサポートされていない場合に見られる。DarkstarはSlackwareをベースにしているため、Slackwareのカーネルが古いことが原因ではないかと思ったのだが、Darkstarで使われているカスタマイズされたカーネル(2.6.23.8-desktop)は昨年11月にリリースされたばかりのものだった。

darkstar3_thumb.png
画面表示の問題

 さらにがっかりしたのは、以前愛用していた1.3GHzのCeleronノートPCだとデスクトップ画面の表示がおかしくなり(右図を参照)、正常に動作しなかったことだ。また、このマシンではPCMCIA無線アダプタの設定にも失敗していたが、表示に問題があるせいでその解決も行えなかった。

 Darkstarのパッケージ管理には、apt-getに似たSlackwareの依存関係解消ツールGslaptが使われている。Gslaptは独自のDarkstarリポジトリを備えているが、1月中旬の時点ではこのリポジトリに新しいアップデートがまったく入っていなかった。日常的に使われるアプリケーションのなかには、FirefoxのようにDarkstarに収録されてから2回もアップデートが行われているものもあるので、これは少しおかしい。

 Firefoxといえば、このブラウザにはFlashビデオを再生するプラグインが入っておらず、代わりにブラウザ内でメディアファイルを再生するMPlayerのブラウザ用プラグインが用意されている。そこで、Linuxpackages.netのFlashプレーヤーパッケージ(Slackware 12用)をダウンロードすることにした。これにはスタンドアロンのFlashプレーヤーとブラウザプラグインの両方が含まれている。インストールはSlackwareのコマンドラインツールinstallpkgを使って問題なく行えた。私は日頃Ctrl-TabキーでFirefoxのタブを切り替えているので、Darkstarでこのショートカットキーが仮想デスクトップの切り替えに割り当てられている点に不満を感じた。そもそもDarkstarのライブDVD環境には仮想デスクトップが1つしか存在しないというのに、なんとも不可解な設定だ。

 文書、画像、ビデオ、オーディオといった一般的なファイル形式の拡張子の関連付けにも問題がある。バンドルされているMPlayerでは申し分なく再生できるにもかかわらず、.flvのようなちょっと珍しいファイルは関連付けが行われていない。またgxineは、libmozjs.soという共有ライブラリの読み込み中にエラーが出て起動できなかった。一方、xine、MPlayer、KPlayerはいずれも問題なく動作し、DVD、CD、一部のAVI、MP4、MP3、OGG、FLVのほか、RealのRMや携帯電話から持ってきた3GPまで再生することができた。ただし、KMixはデスクトップ読み込み時の起動に失敗するため、手動で立ち上げなければならなかった。

 gxine同様、kbluemonのようなKDEのBluetoothユーティリティ群も実行できなかった(「D-Busライブラリを使用しているアプリケーションに不具合があると考えられます。D-Busが-rdynamicオプション付きでビルドされていないため、バックトレース情報は表示されません」というエラーメッセージが出る)。また、USBデバイスを挿してもマウントできないという問題もあったが、このSlackwareの問題についてはよく知られた解決策があるのでそれほど困ることはない。

 どうやらDarkstarの開発者たちは、今回のバージョンではアプリケーションとユーティリティの追加に力を入れたようだ。ほとんどのディストリビューションが新規ユーザにとって使いやすいものにすることに注力している一方で、Darkstarはごく普通のKDE Control Centerとその各種設定ツールを用意しているにすぎない。

 確かに、DarkstarのALICEは独自のインストーラを備えている。新規ユーザにとって使いやすいインストーラではあるが、本ディストリビューションの目玉の1つであるこの重要なコンポーネントにさえ、いくつか粗削りな部分がある。まず、ライブ環境からのインストール時にインストーラ画面のサイズを変更できない。そのため、せっかくディスプレイの解像度に余裕があるのに、サイドバーに表示された手順をスクロールさせながら読まなければならない。また、開発者の母国語が英語でないためか、手順の記述には文法上の誤りがたくさんある。そのうえ、ユーザアカウントの設定ではTabキーが正しく機能しない。次のフィールドに進めようとしてTabキーを押すと、1つ前のフィールドに戻ってしまう。

 欠点はあるものの、私はアプリケーションの豊富さと安定したパフォーマンスを買って、デスクトップマシンの1台でDarkstarを利用している。ただし、GentooからUbuntuに至るまであらゆるディストリビューションを問題なく動作させてきたほかの2台のマシンで動かなかったことから、このディストリビューションのダウンロードを推奨するつもりはない。その他のデスクトップ向けディストリビューションと張り合うつもりなら、Darkstar開発者は以降のリリースに先立ってハードウェア検出の問題の詳細な分析とソフトウェアリポジトリの積極的な管理を進める必要があるだろう。

Linux.com 原文