Ubuntu 8.04:アップグレードかクリーンインストールか

 あなたならどちらの方法をとるだろうか。Ubuntuの最新バージョン8.04 “Hardy Heron” の環境を手に入れるのに、パッケージマネージャを利用してシステムをアップグレードするか、それとも最新版のCDまたはDVDのISOイメージをダウンロードしてクリーンインストールを行うか。一般的には、クリーンインストールのほうが安全で好ましいとされている。この最新かつ最高のバージョンのインストールには全面的な設定のやりなおしという余分な手間が伴うが、アップデートに失敗した場合の苦労を考えれば何でもない、というのが従来の考え方だ。だが、もはやそうした慎重なアプローチをとる必要はないのかもしれない。

 先ごろ、開発用のマシンにUbuntu 8.04をクリーンインストールしたのだが、この作業はあっさりと済んだ。「/home」ディレクトリのデータおよび設定ファイルをバックアップしたうえで最新版をインストールし、バックアップしておいたデータを戻す。ただそれだけですべてがうまくいった。

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Ubuntu 7.10のパッケージマネージャ

 しかし、最近になって別のマシンのUbuntu 7.10のパッケージマネージャから最新のセキュリティアップデート公開の通知が届き、同時に8.04へのアップグレードを勧められた。そこで、アップグレードのほうも試してみることにした。

 このアップグレードの実行は、irc.freenode.netの#ubuntuチャンネルで受けたアドバイスに反するものだった。この件についてコメントをくれた3名は全員、クリーンインストールのほうを勧めていたからだ。ただし、そのうち1人は、あとの作業が楽だからという理由で自らはアップグレードを行っていた。それでも彼がクリーンインストールを勧めてくれたのは、危険を回避できる、複雑な設定を行うならその方が有利、短時間で済む、といった理由からだった。またその3名のうちのもう1人によると、#ubuntuチャンネルで目にしたUbuntu 8.04インストールに関する問題の大半がアップグレードを行った人から報告されていたという。

バックアップは早めにかつ念入りに

 クリーンインストールを行う場合、あらかじめバックアップを取ってインストール後にリストアするもの以外はすべて失われることが前もってわかっている。だがアップデートの場合は、アップデート終了後もあらゆるものが元の状態のまま動作することを期待するものだ。アップデート実行時に忘れてはならない最も重要なことはクリーンインストール実行時と何ら変わらない。始める前にすべてのバックアップを取っておく、ということだ。

 私のメインデスクトップ機にはハードディスクドライブが2つある。うち1つは、「/home」ディレクトリ内のメール、写真、動画、テキストファイルのバックアップ専用ドライブと化し、何年もの間にデータ量は相当なものになっている。Ubuntu 8.04へのアップグレード作業を始める前に、バックアップが間違いなく最新の状態になっていることを確認した。

 アップグレード作業を開始したのは午前11時、それがようやく完了したのは翌日の午前6時半だった。もちろん睡眠をとる間は作業が中断されていたが、それにしてもかなりの時間だ。これに対し、先に別のデスクトップ機で行ったクリーンインストールのほうは1時間しかかからなかった。

 アップグレード作業は、アップグレード用ツールのダウンロードから始まる。続いて、「新しいソフトウェアチャンネルの設定」という処理が行われる。ここでは、現在インストールされているアプリケーションを最新版にするのに必要なレポジトリを調べるようだ。これらの処理は2つ合わせても30分とはかからなかった。

 最も時間を要したのは、新しいパッケージのダウンロードだった(約12時間)。ダウンロードが遅かった最大の理由は、きっと私以外にも大勢の人が同じ時間にダウンロードを行っていて1人あたりの帯域幅が減少したためだろう。アップグレードの実行があと数日早かったら、8.04のISOイメージ全体をダウンロードしてメディアに焼くのに1時間もかからなかったはずだ。新しいパッケージのダウンロードに予想以上の時間を取られたので、念のため、変更を適用する前にメールのバックアップをもう一度取ってからメーラを終了した。

 次は、新しいパッケージのインストールと設定だった。この作業にかかる時間もまたクリーンインストールの場合より長くて、私のマシンでは1時間ほどだった。作業が始まってすぐにプログレスバーの示す残り時間は33分になったものの、その後しばらくは残り時間が逆に増えていく始末だった。結局、そのまま放っておいて眠りに就いた。対話式の操作が求められるアプリケーションが2つ(CUPSとPostgreSQL)あったため、翌朝マシンの前に戻った際には以前の設定ファイルをそのまま使うか、別の設定に変えるかを選択する必要があった。

 それ以降のアップグレード手順(クリーンアップとリブート)はすんなりと済み、やっとのことで目の前にUbuntu 8.04の画面が現われた。作業開始からほぼ丸一日が経っていた。しかし、メールのアカウントやデータはアップグレード前と同じ状態で残っており、ブラウザのツールバーやブックマークもそのままだった。

どちらを選ぶべきか

 アップグレードとクリーンインストールの両方のやり方でUbuntu 8.04のインストールを体験した私が選ぶのはどちらの方法だろうか、またほかの人にはどちらを勧めるだろうか。実は、その答えは必ずしも一致しない。

 両方やってみた身としては、間違いなく「クリーンインストール」を支持する。その方がずっと速いし、誤りの入り込む余地が少なくて確実だと思えるだけでなく、インストール中に管理上のあらゆる決定が行えて新規インストール環境の動作をより広い範囲で管理できるからだ。

 しかし、クリーンインストールがだれにとっても正しい選択であるとはいえない。私が思うに、判断の基準となるのは以下のような点である。以前の環境と同じ状態ですぐにシステムを使えるようにすることを重視するベテランのUbuntuユーザはアップグレードを、Ubuntu関連の問題に対処できる自信がない、またはシステムをすぐにこれまでと同じように動作させることよりも最新かつ最大規模のパッケージを揃えることを重視する人はクリーンインストールを選ぶといいだろう。

 幸いなことに、私の環境ではいずれの方法で手に入れたUbuntu 8.04も問題なく動作しているようだ。

Linux.com 原文