Linuxカーネル3.9リリース、SSDをキャッシュとして利用する「dm-cache」やAndcroidエミュレータ機能などを新たに搭載

 Linus Torvalds氏は4月29日、Linuxカーネル3.9のリリースを発表した。SSDをハードディスクのキャッシュとして利用できる「dm-cache」や、新しい省電力モードの追加、Android環境のエミュレーション環境などが加わっている。

 2月後半にリリースされたLinuxカーネル3.8から10週間での最新版リリースとなり、BrtfsでのRAID 5/6サポートやSSDキャッシュデバイスサポート、Androidエミュレータ機能、いくつかの新アーキテクチャサポートの追加、省電力機能の強化などが特徴となる。

 Brtfsでは従来RAID 0/1のサポートのみが行われていたが、今回新たにRAID 5および6の実験的サポートが加わった。ただしクラッシュセーフではないため、テスト目的での実装というステータスとのこと。また、スナップショット情報を意識したデフラグ(Snapshot-aware defragmentation)が行われるようになっている。マウントされているファイルシステムのラベル情報を取得したり設定/変更するためのioctlの追加や、ロック無しでのdirect-io writeを行う機能の実装、ロックやCPU消費の削減も行われている。

 「dm-cache」と呼ばれる、特定のデバイスをキャッシュとして使用する機構の導入も行われた。これによりSSDなどのストレージデバイスをハードディスクのキャッシュとして利用できるようになり、データの読み込みや書き出しの高速化といった性能改善が期待できる。

 Android関連では、「goldfish」と呼ばれるQEMUベースのARM仮想化環境が搭載された。goldfish環境では仮想CPUやバッテリおよびMMC、オーディオ、グラフィックスなどの関連デバイス用ドライバが提供され、これを利用してAndroid向けの開発ができるという。

 電力管理も改善し、サスペンドモードとして新たにPM_SUSPEND_FEEZEが加わった。プロセスのフリーズ、デバイスのサスペンド、プロセッサをアイドル状態にするもので、STR(Suspend To RAM)と比較して省電力性は低いが、リジュームは高速という。STRをサポートしていないプラットフォームに適しているほか、アイドル状態の省電力が優れている場合はSTRの代わりとして利用できるという。より効率的にCPUの電力消費を管理できるようにするIntelのPowerClampドライバも導入された。

 仮想化関連では、KVMがARMのCortex A 15プロセッサの仮想化機能をサポート、ARMコアでKVMが動くようになった。VMwareのVirtual Machine Communication Interface(VMCI)を統合、仮想マシンとホスト間の通信を改善するなどVMwareの仮想化ソリューションのサポートを全体的に強化できるという。Xen向けのドライバも改善し、プロセッサとメモリのホットプラグ機能が加わった。

 新アーキテクチャとして、TV向けセットトップボックスやメディアプレイヤーなどに使われているSynopsys ARC700プロセッサファミリや、デジタルラジオデバイスなどに使われているMeta ImaginationのMeta ATPおよびHTPプロセッサが追加されている。Chrome OS搭載デバイスのサポートも追加された。

 新機能が導入された一方で、実験的な機能を有効化するのに使われるカーネル設定オプションCONFIG_EXPERIMENTALが削除された。開発モデルの変更とステージングディレクトリにより、この機能の有用性がなくなったと説明している。

 Linuxカーネルのソースコードはkernel.orgやそのミラーサイトなどからダウンロードできる。ライセンスはGPLv2。

kernel.org
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